在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する25~点滴が中断される理由を観察する

画像が生成されました~皮下浮腫・血管内血栓とエコー評価~

末梢静脈カテーテルを留置しても、腫脹・発赤・痛みといった症状が出て途中で抜去しなければならないことがあります。
これらは 中途抜去(Catheter Failure) の原因となり、点滴治療の継続を妨げてしまいます。

特に「腫脹(皮下浮腫)」は、目視では早期に発見しにくい一方で、投与薬剤によっては重篤な合併症につながる可能性があります。そこで役立つのが エコーによる観察 です。


エコーで得られる情報

短軸像を用いると、血管や周囲組織の状態を客観的に把握できます。

  • 深さ:針をどの程度進めれば血管に到達するか

  • 太さカテーテルが留置できるだけの径があるか

  • 走行:分岐や合流点がないか、真っ直ぐ走っているか

例えば、深さ2mm・穿刺角度20°であれば、針を約6mm進めたところで逆血が得られる、といった予測が可能になります。


皮下浮腫と血管内血栓

研究の結果、カテーテル中途抜去の背景にはしばしば 皮下浮腫血管内血栓 が関与していることがわかっています。

  • 浮腫の所見

    • エコーでは皮下組織が「敷石状」に見え、浅筋膜が不明瞭になる

    • 目視では腫脹なしと判断された症例でも、エコーで軽度浮腫を検出できた例あり

  • 血栓の所見

    • 血管内に充填物のような像を認める

これらの変化を早期に把握できれば、「抜去が必要か」「留置継続できるか」 の判断材料になります。


カテーテル先端位置の確認

中途抜去のリスクは、カテーテル先端と血管壁との位置関係 にも影響します。

  • 先端が血管壁に強く接触していると炎症や浮腫が増加

  • 長軸像を使うと、カテーテルが血管に沿って留置されているか確認可能

  • 角度が緩やかであるほど機械的刺激が少なく、トラブルも減少

つまり、留置直後にエコーで確認すること自体が予防策 になります。


安全性と実際の運用

  • 超音波は非侵襲的かつリアルタイムで観察でき、患者への負担は少ない

  • テープの下は観察できないため、必要に応じて部分的に剥がして評価する

  • 実際に1,000件以上の観察を行った研究でも、エコー観察が原因と考えられる感染や脱落はゼロと報告されています


まとめ

エコーを使えば、

といった重要な情報が得られます。
これは単なる「抜去の判断」だけでなく、患者さんの安全と治療の継続性を守るためのツール です。


🔗 関連動画:さくら在宅チャンネル(YouTube

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