在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する34~シャント機能評価における超音波の活用

 


透析患者さんのシャント管理において、血流量や血管構造を正しく評価することは非常に重要です。ここでは、実際のエコー検査で行われる「上腕動脈血流量測定」と「シャント形態評価」の流れをご紹介します。


1. 上腕動脈血流量測定

血流量は、肘から7〜8cm中枢の上腕動脈で測定します。なるべく直線的で石灰化の少ない部位を選ぶことがポイントです。

測定の手順

  1. Bモードで描出
    血管の中心を通る長軸像を描き、超音波ビームの角度を60°以下に調整します。

  2. パルスドプラで波形取得
    サンプルボリュームを血管径の70%以上に広げ、きれいな波形を描出します。

  3. オートトレース機能を使用
    1心拍分を自動トレースし、時間平均血流速度(TAV: time averaged flow velocity)を算出します。

  4. 血管径の測定
    正確な直径を測定し、断面積を計算します。

  5. 血流量の算出
    下記の式で計算します:

    血流量(mL/)=TAV(cm/)×断面積(cm2)×60()血流量(mL/分) = TAV(cm/秒) × 断面積(cm²) × 60(秒)

※TAVを用いることで、過大評価のリスクを抑えられます。ただし、オートトレース機能が必須です。


2. 血管抵抗指数(RI)

RI(Resistance Index)はパルスドプラ法で簡便に算出可能です。
血流量測定時に自動的に表示されるため、合わせて評価することができます。


3. シャント形態評価

シャントの機能を確認するには、血流量だけでなく構造的な評価も欠かせません。

基本の流れ

  1. 短軸走査で動脈を確認
    上腕動脈から末梢へ走査し、吻合部を描出。石灰化や狭窄の有無をチェック。

  2. 静脈の走査
    末梢から中枢に向けてプローブを移動し、シャント静脈の分岐・合流を確認。

  3. 吻合部の描出
    動脈と静脈の位置関係を意識し、角度を調整することで描出可能。

  4. 狭窄の評価
    短軸走査で血管径の急な変化を確認し、長軸像で狭窄長を測定。必要に応じて内膜肥厚や弁肥厚などの所見も観察します。


まとめ

  • 血流量はTAV×断面積×60で算出

  • オートトレース機能は必須

  • RIは血流量測定時に自動取得可能

  • 形態評価では、吻合部・分岐・狭窄を短軸・長軸で丁寧に確認

シャント評価は、透析患者さんの生命線を守るうえで欠かせないプロセスです。エコーを活用することで、非侵襲的かつ正確に評価することが可能になります。