透析患者さんのシャント管理において、血流量や血管構造を正しく評価することは非常に重要です。ここでは、実際のエコー検査で行われる「上腕動脈血流量測定」と「シャント形態評価」の流れをご紹介します。
1. 上腕動脈血流量測定
血流量は、肘から7〜8cm中枢の上腕動脈で測定します。なるべく直線的で石灰化の少ない部位を選ぶことがポイントです。
測定の手順
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Bモードで描出
血管の中心を通る長軸像を描き、超音波ビームの角度を60°以下に調整します。 -
パルスドプラで波形取得
サンプルボリュームを血管径の70%以上に広げ、きれいな波形を描出します。 -
オートトレース機能を使用
1心拍分を自動トレースし、時間平均血流速度(TAV: time averaged flow velocity)を算出します。 -
血管径の測定
正確な直径を測定し、断面積を計算します。 -
血流量の算出
下記の式で計算します:
※TAVを用いることで、過大評価のリスクを抑えられます。ただし、オートトレース機能が必須です。
2. 血管抵抗指数(RI)
RI(Resistance Index)はパルスドプラ法で簡便に算出可能です。
血流量測定時に自動的に表示されるため、合わせて評価することができます。
3. シャント形態評価
シャントの機能を確認するには、血流量だけでなく構造的な評価も欠かせません。
基本の流れ
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短軸走査で動脈を確認
上腕動脈から末梢へ走査し、吻合部を描出。石灰化や狭窄の有無をチェック。 -
静脈の走査
末梢から中枢に向けてプローブを移動し、シャント静脈の分岐・合流を確認。 -
吻合部の描出
動脈と静脈の位置関係を意識し、角度を調整することで描出可能。 -
狭窄の評価
短軸走査で血管径の急な変化を確認し、長軸像で狭窄長を測定。必要に応じて内膜肥厚や弁肥厚などの所見も観察します。
まとめ
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血流量はTAV×断面積×60で算出
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オートトレース機能は必須
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RIは血流量測定時に自動取得可能
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形態評価では、吻合部・分岐・狭窄を短軸・長軸で丁寧に確認
シャント評価は、透析患者さんの生命線を守るうえで欠かせないプロセスです。エコーを活用することで、非侵襲的かつ正確に評価することが可能になります。