在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する⑲~低栄養とサルコペニアの診断と重症度判定

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― GLIM criteria と AWGS をどう使い分けるか ―


■ 低栄養の診断(GLIM criteria)

● 診断

現症基準と病因基準のそれぞれ1項目以上に該当する場合、低栄養と診断します。
GLIM criteria では、スクリーニング後にこの診断ステップへ進むことが前提とされています。


● 重症度分類

低栄養と診断された場合、
現症基準(体重減少・低BMI・筋肉量減少) をもとに重症度を判定します。

重症度は以下の2段階です。

  • 中等度低栄養(Stage 1)

  • 重度低栄養(Stage 2)

アジア人における低BMIの基準については長らく検討課題とされてきましたが、
Maedaら により、日本人に適した基準が提唱されました⁶)。

日本人における低BMIの基準(GLIM)

  • 中等度(Stage 1)
     - 70歳未満:<18.5 kg/m²
     - 70歳以上:<20.0 kg/m²

  • 重度(Stage 2)
     - 70歳未満:<17.0 kg/m²
     - 70歳以上:<17.8 kg/m²


■ GLIM criteria における低栄養の病因分類

GLIM criteria では、低栄養と炎症の関係を以下の4つに分類しています。

  1. 慢性疾患で炎症を伴う低栄養

  2. 慢性疾患で炎症は軽微、または炎症を認めない低栄養

  3. 急性疾患または高度な炎症を伴う低栄養

  4. 社会経済的・環境要因による食糧不足(飢餓)による低栄養

また、GLIMでは
低栄養の判定は管理栄養士などの栄養専門職による詳細な栄養アセスメントで補完される
ことが明記されています。
数値だけでなく、臨床的判断を含めて評価する姿勢が重要です。


サルコペニアの診断方法(AWGS)

● AWGSの位置づけ

2017年に発刊されたサルコペニア診療ガイドライン2017年版では、
アジア人の体格特性を反映した AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)基準の使用が推奨されています⁷,⁸)。

これは、人種による体格差を考慮した評価が不可欠であることを示しています。


● 診断の流れ(AWGS)

AWGSでは、まず筋力低下の有無を評価します。

① 筋力評価

  • 握力(HS)
     - 男性:<26 kg
     - 女性:<18 kg

  • 歩行速度(GS)
     - 0.8 m/秒以下

歩行速度の目安としては、
横断歩道の青信号で、若年者(平均1.5~1.6 m/秒)が渡り切った時に中央付近にいるかどうか
という臨床的イメージが参考になります。

② 筋肉量評価

筋力低下が認められた場合、筋肉量の評価を行います。

  • DXA または BIA を用いた
     四肢骨格筋量指数(SMI / ASMI)

カットオフ値:

  • DXA
     - 男性:<7.0 kg/m²
     - 女性:<5.4 kg/m²

  • BIA
     - 男性:<7.0 kg/m²
     - 女性:<5.7 kg/m²

GLIM criteria の診断で使用した
下腿周囲長のカットオフ値を、筋肉量低下の代替指標として活用することも可能と考えられます。

👉 筋力低下 + 筋肉量低下 の両方を満たした場合、サルコペニアと診断します。


■ 一次性・二次性サルコペニア

サルコペニアの原因分類は以下の2つです。

● 一次性サルコペニア

  • 明らかな原因が加齢以外にないもの

  • 寝たきりや不活動が主因となるケース

● 二次性サルコペニア

以下のいずれか、または複数が関与するもの。

  • 重症臓器不全(心・肺・肝・腎・脳)

  • 炎症性腸疾患

  • 悪性腫瘍、内分泌疾患

  • 吸収不良、消化管疾患

  • 食欲不振を引き起こす薬剤使用

  • 摂取エネルギー量・たんぱく質摂取量不足

ガイドラインでは、
一次性は65歳以上、二次性は年齢基準を設けないとされています⁷,⁸)。


■ 急性サルコペニアと慢性サルコペニア(EWGSOP2)

EWGSOP2 では、新たに以下の分類が追加されました²)。

  • 急性サルコペニア
     - 発症から6か月未満
     - 急性疾患や外傷と関連

  • 慢性サルコペニア
     - 6か月以上持続
     - 慢性・進行性疾患と関連
     - 死亡リスク増加と関連

さらに、
低栄養に関連したサルコペニアという概念も提唱されています。

低栄養に関連する要因:

  • 食事摂取量低下

  • 下痢・嘔吐などによる栄養利用効率低下

  • がん・悪液質など炎症を伴う状態による必要量増加

低栄養では通常、体脂肪の低下を認めますが、
サルコペニアでは体脂肪低下を伴わないことも多い点が重要な違いです。


■ 常に最新の基準で評価する重要性

2019年10月には、AWGS2019 が発表されました。
サルコペニアや低栄養の評価は、
常に最新の基準を踏まえてアップデートしていく必要があります。


■ まとめ

  • 低栄養診断は GLIM criteria に基づき、重症度まで評価する

  • サルコペニア診断は AWGS基準 を用いる

  • 低栄養とサルコペニアは相互に関連し、切り離して考えない

  • 数値だけでなく、臨床経過・背景・炎症を含めた総合評価が重要

  • 新しい基準を常に取り入れ、評価を更新していく姿勢が必要


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