在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

食欲不振で現れた老年期うつ病

施設入居中の90代女性。認知症あり。 

半年くらい前から食欲不振がみられました。食事の摂取量は、主食は全量摂れるが、副食は半分以上残すくらいでした。

また、食事の飲み込みが大変そうで、食事を口にため込んでいるとのことでした。

食事の飲み込みが大変とのことで、上部消化管の通過障害を疑いましたが、好きな物(お菓子)の飲み込みは悪くないとのことで、それは否定的と思われました。

食欲増進作用のあるドグマチール50mgを処方しましたが、食事摂取量はさらに低下し、トータルで2-3割くらいになってしまいました。

介護者よりさらに話を聞くと、ホールよりも自室の方が食べる、活気がない、下を向いていることがある、飲み込むのがつらそうに見えるとのことでした。

老年期うつ病を疑い、ドグマチールをトリンテリックス10mgに変更しましたが、食欲は全く改善しませんでした。

ご家族と相談したところ、病院での検査は希望なく、さらに食事摂取量が減ったとしても、老衰として受け入れるとのことでした。

そこで、トリンテリックスをリフレックス15mgに変更してみたところ、表情は明るくなり、食事は全量摂取できるようになりました。この患者さんにはリフレックスが非常に合いました。

また、同様の症例ですが腰痛にて体動困難であり寝返りもできない患者さんにトラムセットという弱オピオイド(弱い麻薬と同等の鎮痛作用ですが麻薬でない薬)を処方し、強い吐き気を生じた為ノバミンという吐き気どめを処方したところ、とても元気になり、本来こんなに活動的な方なのかと驚かされた患者さんもいました。プロクロルペラジンマレイン酸として不安神経症などの適応ある処方でしたが、老年期のうつを改めて再考させられました。

老年期うつ病はよくみられ(高齢者の約10%)、認知症とよくオーバーラップします。自律神経症状、不眠、食欲低下といった身体症状が認められやすく、希死念慮の訴えも多いです。背景には喪失体験(加齢に伴う身体機能の低下、死別、社会的役割の縮小)があります。

#ノバミン

逗子在住山内明徳様撮影
#逗子、葉山、横須賀、鎌倉在宅医療
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