食事介助の一番の目的は摂食量を確保することですが、摂食量を確保することだけを唯一の目的としてはいけません。
高齢者の場合、運動・動作機会が奪われると身体機能はすぐに落ちてしまいます。全面的に食事介助をしてしまうと、これまでやっていたことやできる動作を行う機会が失われてしまいます。そうではなく、これまでやっていたことは続けられるように支援しながら食事介助をすることが大事です。
スプーン・食器を持つ
完璧に食具を自分で持てない状態であっても、少なからず持つ能力があるならば、スプーンや食器を持ってもらいましょう。
身体機能を維持できるだけでなく、スプーンや食器を持つことは食事中であるという環境認知(メタ認知)や、どのような食物を食べようとしているかといった食物認知、どのタイミングで捕食するのかといった現状把握にも有用です。つまり、食欲や安全な摂食嚥下運動にも関連してきます。
十分な握力や手指動作の巧緻性がない場合には、患者さんが食具を持つ手を介助します。
| 食具を持つ手の介助
手背側から患者さんの手全体をケア提供者の手で包み込んで介助すると食具が離れることなく、有効なセルフケア支援が可能です。お皿、コップを持つ手も同様に介助します。
食具を持つ手の介助(概念図)
食事中の姿勢
セルフケア支援の観点から考えると、食事中の姿勢にも注目するべきです。
自分で座位をとれる(=椅子に座れる)方は、椅子で食事をするようにしましょう。背もたれのリクライニングが必要かどうかはその方の咽頭機能次第ですので、リクライニング車いすを「一律に使用する」ことは避けたほうがよいです。
車いすに座ることができるのにもかかわらず、ベッド上で食事をするのにもデメリットがあります。ベッド上では下肢が臀部と同じ高さになってしまいますし、場合によっては膝が臍より高く上がる方もいるかもしれませんので、腹圧が上がりやすくなります。さらに、ベッド上だと足底を地面につけないので、座り直しが難しい、体幹バランスがとりにくいといったこともデメリットとなります。
口腔ケア
食前や食後に行う口腔ケア時もセルフケア支援を意識してください。手に持ってもらった歯ブラシやスポンジブラシを患者さん自身、または介助を添えて口腔清掃に役立てます

なかには、十分な清掃ができない場合もあるかもしれません。セルフケア支援をしたのちに、ケア提供者が仕上げとして全面的な口腔ケアを行うとよいでしょう。患者さん自身の能力を最大限引き出した上で、不足部分を補うというアプローチが重要です。