在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について④~アルコール、せん妄、うつ病——認知症との見極めポイント

画像が生成されましたアルコール性健忘症候群とは?

長年の過度な飲酒は、脳にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。特に慢性的なアルコール摂取による脳萎縮は、認知機能の低下=アルコール性健忘症候群を引き起こす可能性があります。

実際、アルコール依存症患者を対象にした研究では、断酒から6~7週間で脳体積が回復することが報告されています(Brain, 2007)。つまり、「飲み続けると脳は縮むが、やめればある程度回復する」可能性があるのです。

認知症が疑われる場合には、まず飲酒歴の確認が重要です。現在も飲酒があるようなら、しばらく断酒してもらい、その後の経過で「本当に認知症かどうか」を見極めましょう。


せん妄とは? 認知症との違い

せん妄(Delirium)は、感染症・脱水・環境の急変・薬剤などをきっかけに突然起こる意識障害です。特徴としては:

  • 発症が急激(数時間〜数日)

  • 日内変動が大きい

  • 幻覚・妄想・興奮を伴うことも

  • 回復可能性がある

高齢者ではせん妄を合併しやすく、入院時や入院後に発症する割合はそれぞれ10〜30%、手術後では15〜53%、ICUでは70〜87%と非常に高率です。

**認知症アルツハイマー病)**とは異なり、せん妄は適切な原因対応と治療により改善が期待できます。

表3:せん妄とアルツハイマー病の違い

特徴 せん妄 アルツハイマー
発症 急激(数時間〜数日) 徐々に進行(数か月〜数年)
経過 日ごと・時間ごとに変動が大きい 時間単位での変化は少なく徐々に悪化
覚醒度 軽度~中等度に低下 初期は保たれる
幻覚 多い 少ない
回復可能性 ある ない

うつ病アルツハイマー病の見分け方

高齢者の「物忘れ」症状の裏には、うつ病が隠れていることも少なくありません。うつ病認知症を見分けるポイントは以下の通りです。

表4:うつ病アルツハイマー病の違い

特徴 うつ病 アルツハイマー
物忘れの自覚 はっきりある 少ない
物忘れへの姿勢 積極的に訴える うまく取り繕うことが多い
典型的な妄想 心気妄想(「自分はボケた」など) 物盗られ妄想(「誰かに財布を盗られた」など)
見当識(日時・場所) 保たれる 障害される
経過 自然に改善することも多い 徐々に悪化

見極めと安心のために

高齢者の物忘れ=すぐに「認知症」とは限りません。アルコールやうつ病、せん妄などの別の要因が背景にあることも多く、正確な見極めが安心にもつながります。

とくにアルコールやせん妄の場合は回復可能性があるため、早めに気づき、必要に応じて専門医と連携することが大切です。

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