「認知症かもしれない」と思って受診したけれど、よく調べてみると薬や内科疾患が原因だった——そんなケースが、実は少なくありません。
今回は、「認知症に似た症状を呈するが、実は別の原因であった」ケース、特に薬剤や内科疾患に焦点を当ててご紹介します。
薬が原因の“認知症もどき”もある
高齢者では、薬の影響で「ふらつき」「転倒」「食欲低下」「失禁」など、いわゆる老年症候群が現れることがあります。中でも見落とされやすいのが、薬による認知機能低下です。
実際、認知障害が疑われた患者のうち約11%は薬剤が原因だったという報告もあります。
よくある原因薬:
▶ 薬歴の見直しが第一歩です。不要な薬を見極めて中止するだけで、見違えるように改善することもあります。
内科疾患による“認知症もどき”
代謝異常や内分泌疾患、ビタミン欠乏症などの身体的な疾患によっても、記憶力の低下やぼんやり感などが出現します。こうした場合も、早期に見つければ治療で改善する可能性があります。
米国神経学会(AAN)は、認知症が疑われた際に行うべきルーチン血液検査項目を以下のように定めています(表6)。
表6:AANが推奨する認知症スクリーニング血液検査
高齢者によくある原因疾患と特徴
● 甲状腺機能低下症
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精神活動・動作が緩慢になり、集中力低下や傾眠、記憶障害などが出現。
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年齢とともに頻度が上がり、高齢者ではまれではない。
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治療により認知機能が改善する可能性も。
● ビタミンB₁₂欠乏
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錯乱、傾眠、無気力、妄想、記憶障害などが出現。
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貧血や胃切除の既往がなくても、高齢者の14.5%にB₁₂欠乏が見られたという報告あり。
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採血で確認し、早期補充で回復が期待できる。
● 梅毒(進行麻痺)
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晩期顕症梅毒では、記憶障害や見当識障害が出ることも。
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ただし北米では極めてまれであり、米国神経学会はルーチンスクリーニングを推奨していません。
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疑わしい病歴がある場合に限り検査を検討。
まとめ:認知症=即診断ではなく、まず「除外診断」を
高齢者の「物忘れ」や「ぼんやり感」がすべて認知症とは限りません。
**薬の副作用や内科疾患が背景にある“認知症もどき”**は、対応すれば大きく改善する可能性があります。
特に初診時には、
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薬歴の確認(不要薬の見直し)
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血液検査(甲状腺、ビタミンB₁₂含む)
が極めて重要です。
「認知症」という言葉にとらわれすぎず、治療可能な原因がないかをまず確認することが、患者さんとご家族の安心にもつながります。
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