透析患者さんにとって、**バスキュラーアクセス(VA)は命綱ともいえる血液の出入り口です。
本邦では、自己血管を利用した内シャント(AVF: arteriovenous fistula)**が最も多く、透析患者の約9割がAVFで治療を受けています。
今回は、エコーを用いたAVF(内シャント)の評価についてまとめます。
内シャントに求められる条件
AVFをはじめとする内シャントには、以下の条件が必要です。
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透析に十分な血流が得られる
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穿刺しやすい血管がある
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管理が比較的容易である
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合併症が少ない
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長期に使用可能である
まずは理学所見が基本
エコー評価に入る前に、最も大切なのは理学所見です。
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見る:シャント静脈の走行、血管拡張、瘤の有無を観察
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聴く:シャント音の大きさ・連続性・高低で狭窄を推測
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触る:指先で感じる“スリル(ざわざわ感)”で血流状態を把握
狭窄部では、前後でスリルの性状が異なるため、触診だけでもある程度の部位推定が可能です。
エコーでできるシャント評価
理学所見で得られる情報は全体の7~8割ですが、より正確に知るためにはエコーが有効です。
エコーによる評価は大きく機能評価と形態評価に分けられます。
① 機能評価
上腕動脈血流量
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脱血量200mL/分を得るには、少なくとも350mL/分以上の血流が必要。
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上腕動脈血流量が500mL/分以下になると、シャント機能低下を疑います。
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脱血不良のカットオフ値は 350mL/分。
ただし、測定値には末梢循環血流も含まれるため、必ずしもシャント血流量と一致するわけではありません。
血管抵抗指数(RI: Resistance Index)
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RI = (収縮期血流速度 - 拡張末期血流速度) ÷ 収縮期血流速度
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値は0〜1の範囲をとり、高いほど血管抵抗が強いことを示します。
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RI 0.6以上 → 狭窄の可能性あり
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RI 0.7以上 → 治療介入を検討
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シャント閉塞時は RI ≈ 1 となります。
② 形態評価
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血管径、壁の性状、狭窄部位の描出
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瘤や血管拡張の確認
まとめ
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理学所見(見る・聴く・触る)が第一歩
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エコーでは血流量やRIを測定し、狭窄や機能低下を客観的に評価できる
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上腕動脈血流量 <350mL/分 や RI >0.6 は注意が必要
透析に欠かせないシャントを守るため、日常の観察とエコー評価を組み合わせることが大切です。
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#内シャント #AVF #エコー #透析管理 #看護師技術