在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する29~悪液質(カヘキシア)

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― 栄養を「増やしても」改善しない病態 ―

**悪液質(cachexia)**とは、
通常の栄養療法では改善が困難な、進行性の代謝異常症候群です。

単なる低栄養とは異なり、

  • 著しい骨格筋量の減少

  • 慢性炎症の持続

  • 機能障害の進行

を特徴とする、複合的な栄養不良状態です。


■ 悪液質を来す主な疾患

悪液質は、以下のような慢性消耗性疾患で認められます。

👉 「食べられないから痩せた」のではなく、
「病態そのものが筋肉を削る」状態
であることが本質です。


■ がん悪液質のステージ分類

がん悪液質は、3段階に分類されます。

① 前悪液質(pre-cachexia)

  • 慢性炎症の存在

  • 軽度の体重減少

  • 食欲不振が出始める段階

👉 この時期が最も重要

  • 早期の栄養介入により
    栄養不良の進行を遅らせることが可能

  • 状態評価を行いながら、
    攻めの栄養療法が許容されるステージ

目安

  • エネルギー:25~30 kcal/kg/day

  • たんぱく質1.0~1.5 g/kg/day

  • 定期的な評価が必須


② 悪液質(cachexia)

  • 明らかな体重減少

  • 骨格筋量の減少

  • ADL・QOLの低下が進行

👉 栄養介入の効果は限定的になり始める段階


③ 不応性悪液質(refractory cachexia)

  • 急速に進行するがん

  • 抗がん治療抵抗性

  • 代謝異常が強く、栄養不良の改善が困難

👉 ここが最も重要な判断ポイントです


■ 不応性悪液質で起こりやすい問題

● 経管栄養を行った場合

  • 下痢

  • 腹部膨満

  • 嘔吐

👉 継続困難になるケースが多い

● 静脈栄養を行った場合

👉 体液貯留や代謝異常により、
かえってQOLを著しく低下させる可能性


■ 結論

不応性悪液質に「攻めの栄養療法」は適応しない

  • 不応性悪液質では
    👉 栄養を増やしても、筋肉は増えない

  • むしろ
    👉 苦痛や合併症を増やすリスクが高い

この段階で重要なのは、

  • 「栄養状態を改善する」ことではなく

  • 苦痛を増やさず、生活の質(QOL)を守ること

👉 不応性悪液質において、
栄養状態改善を目的とした攻めの栄養療法の適応はありません。


■ 悪液質で大切な視点

  • 「食べさせる=良い医療」ではない

  • 病態・ステージを見極める

  • 栄養は目的ではなく手段

  • QOLと本人の価値観を最優先

在宅医療・緩和ケアでは、
**“増やす栄養”より、“寄り添う栄養”**が求められます。


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