在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する45~エコーで見るDVT(深部静脈血栓症)― リンパ浮腫との鑑別にも重要

画像が生成されましたリンパ浮腫と同様に「下肢の腫脹」を呈する疾患として、**深部静脈血栓症(DVT: deep vein thrombosis)**があります。
DVTは、**肺塞栓症(PE: pulmonary embolism)**の原因となり得る、命に関わる重要な疾患です。
今回は、DVTの基本・症状・エコーによる診断法を整理します。


🩸DVTとは? 〜VTEという概念〜

DVTとは、主に**下肢の深部静脈(腸骨静脈〜下腿静脈)**に血栓が形成された状態を指します。
それ自体は必ずしも致死的ではありませんが、血栓が肺へ飛んでPE(肺塞栓症)を起こすと、
突然の呼吸困難やショックを来し、重篤転帰をとることがあります。

この DVTとPEを合わせて「VTE(venous thromboembolism:静脈血栓塞栓症)」 と呼びます。
VTEは俗に「エコノミークラス症候群」「旅行者血栓症」としても知られ、
長時間同じ姿勢で過ごす飛行機搭乗中や、術後の臥床中に発生することがあります。

💡 日本でも近年、生活習慣や高齢化、長時間手術などの影響でVTEは増加傾向にあります。


⚙️DVTの発症メカニズム(Virchowの三徴)

DVTは以下の3要因(Virchowの三徴)によって発生します。

  1. 凝固能亢進(脱水・悪性腫瘍・術後・妊娠など)

  2. 静脈うっ滞(長期臥床・下肢麻痺・肥満など)

  3. 静脈壁損傷(外傷・カテーテル留置など)


🩻症状と臨床所見

主な症状 臨床的特徴
下肢の腫脹・疼痛 一側性が多く、急速に出現する
圧痛 下腿後面〜膝窩部に触診痛
圧痕性浮腫 指で押すと跡が残る
周径差 健側より3cm以上の腫大
表在側副静脈の怒張 慢性期でみられる

これらの症状だけでは他疾患(リンパ浮腫蜂窩織炎・静脈瘤など)との鑑別が難しく、
エコー検査による直接確認が診断の鍵となります。


🔍DVTの分類 ― 発生部位と形態による違い

① 部位による分類

  • 近位型DVT:腸骨〜膝窩静脈まで

  • 遠位型DVT:下腿深部静脈(ヒラメ筋静脈など)に限局

💡 近位型ほどPEのリスクが高く、早期診断と抗凝固療法が必須です。

② 形態による分類

分類 特徴 リスク
閉塞型 静脈内腔を完全に閉塞 血流途絶、うっ血強い
非閉塞型 内腔の一部に血栓残存 血流は一部保たれる
浮遊型 血栓の中枢側が静脈壁に固着せず内腔に浮遊 高リスク(塞栓源)⚠️

🧠DVT診断の流れ

  1. Dダイマー検査
     血栓分解産物であるDダイマーの上昇を確認。陽性であれば次へ。

  2. エコー検査(圧迫法)
     血栓の有無と範囲を直接観察。
     静脈を圧迫し、「内腔が潰れなければ血栓あり」と判断します。


🩺エコーでの観察手技と評価ポイント

DVTをエコーで診る際は、以下の点を意識します。

評価項目 内容 意義
部位診断 骨盤内総腸骨静脈〜下腿静脈まで連続的に観察 血栓範囲を正確に把握
形態診断 閉塞・非閉塞・浮遊の型を判定 PEリスク評価
性状診断 エコー輝度や内部均一性を評価 血栓の新旧を推定

🩻 性状の見分け方

  • 急性期血栓:低エコー(黒く見える)で柔らかい、圧迫しにくい

  • 慢性期血栓:高エコー(白く見える)で硬く、器質化して壁に癒着

⚠️ 慢性化した血栓では、静脈内腔が狭小化・石灰化し、リンパ浮腫との鑑別が必要になります。


📍観察のコツ(B-mode圧迫法)

  • プローブを縦方向に連続走査し、静脈の連続性を追う

  • 定期的に圧迫を加えて内腔の潰れ具合を確認

  • 血栓を認めた場合は

    • 範囲

    • 位置(近位/遠位)

    • 先端の可動性(浮遊性)
      を記録する

💡 血栓の可動性は、肺塞栓発症の危険性評価に最も重要な所見です。


🩶まとめ ― DVT評価の意義とリンパ浮腫との関連

  • DVTはPEの前段階であり、見逃せない疾患。

  • エコーは非侵襲的かつ即時性に優れた一次診断ツール

  • リンパ浮腫とDVTは“むくみ”という共通症状を持つため、両者の鑑別においてエコー評価が不可欠。

  • 血栓の部位・範囲・性状を正確に把握することで、
     早期治療と再発予防、そして患者の安全管理につながります。


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