在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について50~【認知症ケアの基本的対応】 ―最初に確認すべき5つの優先順位―

 


認知症が疑われたとき、すぐに薬や介護サービスを考える前に、まず行うべきことがあります。
それは「診断の確定と除外」です。

まずは、内科的・脳外科的疾患による可逆的な認知機能低下(例:甲状腺機能低下、慢性硬膜下血腫、感染症など)を除外し、
次に「薬剤による認知機能低下」がないか確認し、必要なら減薬を行います。

これらを終えたうえで「認知症性疾患である」と判断された場合、次の5つの対応方針を念頭におきましょう。


🧩 認知症対応の5つの優先順位

  1. 危険動作はやめてもらう

  2. 仕事や社会的活動はできるだけ続けてもらう

  3. 外出機会が少ない人にはデイサービスを利用してもらう

  4. 家庭では“失敗体験”をさせない

  5. 家庭内でできる家事は本人にやってもらう

この順番を意識するだけで、日常対応の迷いがぐっと減ります。
以下、それぞれのポイントを具体的に見ていきます。


① 危険動作はやめてもらう ― 安全がすべての出発点

認知症ケアの第一歩は「安全の確保」です。
本人や家族の希望よりもまず優先すべきは、“事故を防ぐこと”。
このステップを乗り越えれば、早すぎる入所を防ぐことにもつながります。

代表的な危険動作は次の2つです。


🚗 自動車運転の中止

認知症の方の交通事故リスクは、同年代の一般人口の約2.5倍にのぼると報告されています。
理想は本人が納得して「自分の意思で」運転をやめること。そのためには早い段階から家族や支援者が話し合うことが大切です。

伝え方の工夫として、

  • 「法律が変わって、この病気では運転できなくなった」

  • 「運転免許を自主返納すれば“運転経歴証明書”がもらえ、身分証明書にもなる」
    など、安全性と利点の両面を伝える方法が有効です。

どうしても納得しない場合は、家族と連携して車を一時的に隠す、免許証を預かるなど、やむを得ない対応を取ることもあります。
警察署や免許センターの「運転適性相談窓口」に相談することも推奨されます。


🔥 火の不始末への対策

火の不始末は、独居高齢者の生活継続を脅かす大きなリスクです。
鍋ややかんの焦げ跡、仏壇の火、喫煙の有無など、早期確認が鉄則です。

  • コンロを止めてオール電化にする

  • 電気式の仏壇ろうそくに変更

  • 石油ストーブは廃止し、電気ストーブに

  • 防炎カーテンやカーペットを使用

  • 火災報知機の設置は必須

また喫煙者には禁煙を促しましょう。
禁煙によって精神症状が悪化するという科学的根拠はなく、むしろ精神的にも良い影響が報告されています。


② 仕事や社会的活動をできるだけ続ける

危険がない範囲で、これまで続けてきた仕事や地域活動はできるだけ継続してもらいましょう。
それが生活リハビリになり、廃用症候群の予防にもつながります。

家族が「もう仕事は無理」と言っても、

「役に立たなくても、通うこと自体がリハビリになります」
と伝えることが大切です。


③ 外出機会が乏しい人はデイサービスを活用

外出や人との関わりは、認知症の進行を遅らせる効果があります。
「安全に」「楽しく」社会参加できる環境として、デイサービスの利用を検討します。


④ 家庭内で失敗体験をさせない

「できない」「怒られる」「忘れてしまう」経験の積み重ねは、本人の自尊心を傷つけます。
できないことを指摘するより、できたことを褒める対応を心がけましょう。


⑤ 本人に家事をしてもらう

認知症の方でも、「できる家事」は必ずあります。
洗濯物をたたむ、テーブルを拭く、新聞をそろえるなど、小さな成功体験の積み重ねがQOLの維持につながります。


🌿 まとめ

認知症ケアの基本は、薬や制度よりも「安全・尊厳・役割」の3本柱。
まずは危険をなくし、社会参加の場を保ち、家庭での役割を大切にする。
その積み重ねが、本人と家族の穏やかな日常を支えます。


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