在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療を科学する51~

在宅でPAD(末梢動脈疾患)患者を診るとき、何を・どのように評価すべきか。本記事では循環評価感染評価の2軸に分けて、現場ですぐに使える観察ポイントを整理します。

① 評価の2つの柱

PAD患者のフットケア評価は大きく「循環評価」と「感染評価」の2本柱で行います。どちらかが欠けると、重篤な合併症を見逃すリスクがあります。

🫀 循環評価
  • ABI(可能なら)
  • 足背 / 後脛骨動脈の触知
  • CRT時間(毛細血管再充満時間)
  • 皮膚温
  • 色調(蒼白・紫色は虚血)
  • びらん・潰瘍の有無
🔬 感染評価
  • 発赤・腫脹・排膿・疼痛
  • びらんや浸軟
  • 皮膚破綻の範囲

⚠️ PAD患者は「痛みが出にくい」ため、
目視での観察がより重要。

② 循環評価の詳細

ABI(足関節上腕血圧比)は0.9未満でPADを示唆します。在宅では計測が難しい場合もありますが、可能であれば積極的に活用しましょう。

足背・後脛骨動脈の触知は最も手軽な循環評価です。触れない・弱い場合は虚血を疑います。CRT時間は2秒以上で循環不良のサインです。

皮膚の色調も重要な手がかりです。蒼白は動脈血流の低下、紫色(チアノーゼ)は静脈うっ滞や重篤な虚血を意味します。

💡 ポイント:皮膚温の左右差も循環評価に役立ちます。患側が健側より冷たければ、動脈血流の低下を疑いましょう。

③ 感染評価の詳細

PADによる虚血創は感染を合併しやすく、悪化すると壊疽・下肢切断に至ることがあります。感染の5徴候(発赤・腫脹・熱感・疼痛・機能障害)を意識して観察してください。

びらんや浸軟は、過度な湿潤環境が皮膚を傷めているサインです。特に趾間(足指の間)は見落としやすいため、毎回確認する習慣を持ちましょう。

皮膚破綻の範囲は、創部の拡大・縮小を経時的に記録することが重要です。スケールで計測するか、写真による記録が推奨されます。

④ なぜ「目視」が特に重要なのか

PAD患者は末梢神経障害を合併していることが多く、足に傷ができても「痛みを感じない」ケースが少なくありません。患者本人が気づかないうちに潰瘍が悪化する「サイレント創傷」が問題です。

だからこそ、訪問のたびに靴下・靴を脱いでもらい、足全体(踵・趾間・足底を含む)を目視で確認することが、在宅フットケアの基本となります。

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